飢渇の竜


重陽の黒住伴さんのリクエストで制作。
右に御座いますのは、私の描いたものを、伴さんが広げ、小説にして下さった物になります。
タイトルも伴さんの小説より引用させていただいております。
政助




美しいかんざしに陰茎を貫かれ零れたその呻きは、儂が今まで想像しておった通り、耳が溶け落ちそうなほどに甘かった。

「好い」

熱をもった耳たぶを噛みつつそう吹き込めばその全身は震え、またかんざしに圧迫された尿道よりとろりと滴が垂れ落ちて自身の陰茎もろとも儂の手を汚した。

「…伊達、殿ッ……」

儂の手の下で、くぐもった声が響く。拒む言葉が続くことは承知しておるため、言わせる前に儂はかんざしを軽く押し込んだ。男の声は言葉として実を結ぶ前に悲鳴で裂けて散る。

「かように大きな声を上げては、我が家臣が何事かと駆けてくるかも知れぬぞ…」

言い聞かせつつ指をその口へくわえさせてやる。涼しい声が紡がれるとは到底思えぬほど熱い口内はやわらかで、指先にとらえた舌は濡れて滴る絹のようである。

「加賀の重臣が摩羅にかんざしを挿されてよがっておった、等と噂がたてば……困るのは貴殿であろう……」

儂の言葉を聞き、男がぶるりと肩を震わせた。忠義に厚く礼節を重んじるこの男には、こういった脅し文句がよく通るようである。かんざしを動かすと、全身を魚のようにびくびくと跳ねさせつつも声だけは漏らすまいと、ぴたりと唇を閉じ、くわえさせた儂の指ごと唾液をすすり堪えていた。

「ふ、っ……ぅ、く」

耳下の窪みを丁寧にねぶりつつ、かんざしを指先で緩やかに回す。体が引きつり苦しげな呻きが零れるが、やはり感じておるのは痛みのみではないようで、陰茎の先端からは絶え間なく滴が流れ続けておる。
儂は静かに、男の陰茎から手を離す。耳たぶを一度だけ吸うとくわえさせていた指も抜き、密着していた体も離した。

「伊…達、殿……」

快楽も苦痛も半ばのまま唐突に放り出された男は、涙に濡れた目を困惑に揺らしながら儂を見上げる。
手酷く痛め付けてやりたいと、腹の底が疼く瞳である。

「すまぬな…加賀藩の御家老自ら、わざわざかような山奥まで御足労頂いて」

儂の真意を読み取れぬ男の瞳が、面白いほどに揺らめいている。儂は込み上げる高笑いを堪えつつ、無理矢理に剥ぎ取り散らかしていた男の袴や褌を集め、出来る限り優しい微笑みを張り付けてその傍らに膝をついた。

「いや、このような儂の戯れに付き合わせ誠にすまぬ。…さあ、袴を着付けて差し上げよう」

男の目が広がった。意地悪く歪んだ儂の顔が映り込んでいるのがたまらなく愉快で、唇の端がさらにつり上がる。
男の足首を掴む。女のような細さはないが、使い慣れた刀の柄のようにしっくりと手のひらに馴染むようなしなやかさがあった。

「伊達殿、」

男の唇がもどかしげに動いた。悲痛ささえ帯びた瞳がさ迷い、自らの陰茎に落ちる。
赤く腫れた陰茎の先で、ぬめりに包まれた玉飾りが眠そうに光りながら、男の呼吸にあわせて震えていた。湧き上がってくる先走りに幽かに押されて浮かび尿道の紅肉を覗かせては、またそれを隠すかのごとく沈む。
簡素な玉かんざしを選んだ己を儂は褒め称えた。垂れ下がって揺れる飾りなどついたかんざしなど選んでいたら、この男の淫らで浅ましく揺らめく陰茎が隠れてしまうところであった。
男が言葉を見つけるより先に、儂は張り詰めた足の腱を爪の先でなぞりながら笑った。

「まさか、この儂の誠意がこもった贈り物を突き返すような愚かしさは、加賀の御家老殿には備わっておらぬであろうな」

男は弾かれたように顔をあげ唇を二三度震わせたが、結局何を言うこともなく俯いて黙り込んだ。引き結ばれた唇は紅の組紐を彷彿とさせる頑なさである。
腕を引いて立たせると、自分で、と小さく消え入りそうな声が響いたが、聞こえぬふりをした。引き締まった腰に褌をあて、自分で巻くときのように締めていく。着せてやりながら竿や先端の玉飾りを指で戯れに弄れば、ひきつれた悲鳴や息を呑む音が儂を楽しませた。

「は、……っふ…」

荒く息を繋ぎふらつきながらも、男は儂にすがることも抵抗することもなく両の足で立っていた。震える内腿を五本の指で撫で上げてから袴も着せ、しっかりと帯も締めてやる。反り立つ陰茎も、そこに挿された玉かんざしも、汗に濡れて艶やかな腿も、すべて隠れて見えなくなる。男の赤く染まった目尻や頬や、きつくひそめられた眉間のしわ、引き結ばれた唇のみが下半身に施された虐遇を伺い知る唯一の手懸かりと言えよう。しかし何も知らぬ者から見れば、ただ勝手に熱でも出して苦しんでいる他藩の使いにしか見えぬ。

「これで、好し」

儂がそう言って帯の上を軽く叩くと男は細く息を吐き、糸が切れたようにずるずるとその場へ座り込んだ。股間を踏みつけてやろうかと爪先が獰猛な衝動に震えたが、ぐっとこらえる。

「誰かあるか」

儂が声を張ると、足元で男が可哀想なほどに震えた。何をするつもりか、と潤んだ目が怯えるように問いかけてくる。
やや間を置いて、家臣が障子を開いた。儂は男の傍らに膝をつき、笑顔を消して神妙そうな声を努めて出す。

「奥村殿の具合が優れぬようだ。早急に床を敷き延べて差し上げよ」

男は目を見開き、慌てて儂の腕にすがりついた。拒否を遠慮の言葉に包んで吐こうと思ったのであろうが、家臣からは見えぬ角度で袴の股間を撫で上げてやればまた唇を噛み締めて大人しくなった。

「加賀の御家老殿が、奥州からの帰路で倒れでもしたら我が藩の沽券にも関わる大事である。……奥村殿、使いの者は出しておく故、今宵はこの城でゆるりと休んでゆかれるがよい」

焦りと困惑に揺らめいていた男の顔に、絶望の色が差した。腹の奥を熱く揺さぶるような美しい表情から儂は視線をそらし、家臣を急き立てた。見つめ続けていたかったが、神妙さを努めている芝居が崩れては台無しになる。
家臣が丁寧に襖を閉めて部屋のなかがまたふたりきりに戻ると、儂は柔らかなその髪をすいた。髪の隙間に咲くような赤い耳のふちを掠めれば、男の手は袴を強く握りしめて生地にしわをよせた。