真赭(助右衛門総受け)
右に御座いますのは、私の描いたものを、重陽の黒住伴さんが広げ、小説にして下さった物になります。
嬉しすぎるしエロ過ぎる。

奥村殿の目は薄く開いてはいるが、穏やかに溢れる涙に濡れ、虚ろに揺らめいているだけで、何も映してはいないようだった。
「奥村殿」
その目を覗き込んで名を口にしても、瞳は俺を探して動くことさえしない。
もう一度名を呼んでみても、彼の反応は幾らも変わりはしなかった。
「助右衛門。幸村殿が呼んでおるぞ」
見るに見かねたのか、奥村殿の右手を穏やかに撫でていた前田殿が笑いを含んだ声で言う。
すると、俺には全く反応をかえさなかった奥村殿が、ゆっくりと顔を前田殿の方へ向けた。
力を無くして緩んでいた右手も、前田殿の手首をそろりと撫で返す。
奥村殿の、唾液に濡れたその唇が前田殿の名を呼ぼうとして震えたのが解ったため、何だか悔しくなった俺は苛立ちをそのまま腰の動きに代えてぶつけた。
「ひ…、っ」
奥村殿の体が弓のように反る。浮かんでいた汗の粒が肌の上を滑っていく。
彼の汗が落ちた敷布は、彼と俺たちの体液や滑りをよくするための香油で濡れに濡れて、もう色も変わらなかった。
「あ、ぁ…ッ、っ…」
汗を流れ星のように散らせる彼の様子に夢中になり、俺はひたすら腰をぶつけた。
いくら抉っても狭くきつい奥村殿のなかは、その瞳とは裏腹に俺へ執拗に絡み付いてくる。
強く奥を突けばもっととねだるように吸い付き、素早く腰を引けば行くなと引き留めるように絞めてくる。
ならば応えてやる、と俺が奥村殿の脚を肩へ掛け直したとき、声が掛かった。
「幸村。あまり激しくするでない」
声の主は、政宗だった。隻眼が俺をじろりと睨んでいる。眼帯を外しているせいでその凄みは常よりも幾らか増していた。
「貴様が激しく動くと、奥村殿の髪も動いて逃げてしまう」
政宗の手は、奥村殿の髪に絡んでいた。いや正確には、奥村殿の髪をすくい、自身の陰茎に絡めているのだった。奥村殿の髪は柔らかくしなやかで、その口とも中ともまた違う、不思議な快感が得られるらしい。
何より、そのきれいな髪を汚しているという征服感が堪らないのだと言い、他の誰かが奥村殿と繋がっているときの政宗は好んで奥村殿の髪を使っていた。
確かに、奥村殿の艶のある緩やかに波打つ髪へ陰茎が挿され、その先走りや精液にまみれていく様子は卑猥でこちらの気持ちも昂る。
「そんなにいいのか、奥村殿の髪」
思わず尋ねると、政宗は唇を歪めて笑った。それは本当に機嫌のいいときにしか見ることのできない顔だと、長くはない付き合いだが俺も知っていた。
今度、政宗が奥村殿と繋がっているときには俺もその髪を使わせてもらおうと決めつつ、ふと横を見る。
「政宗は髪でするのが好きだが、兼続は手が好きだよなあ」
左手に陰茎を握らせ、奥村殿の表情をじっと眺めている兼続は、俺を見ることもなく頷いた。
この男は、奥村殿を眺めているときには格段にまばたきの回数が減る。
「わしはこうして、疲れきって力を失った奥村殿の手が好きだ。時おり、それでも楽しませてくれようとしてぴくりと動く指が堪らない」
そう言いながら兼続が心の底から愛しそうに奥村殿の頬を撫でると、政宗もそれに倣ってなのか、反対側の頬を撫でた。ふたりにそうされても奥村殿はやはり反応を示さず虚ろに涙を流し続けているが、ふたりともとても満足そうな顔をしている。
俺が好きなのは、やはり奥村殿のなかだった。香油をたっぷりと使いほぐした肉の壁は、ひとことでは言い尽くせないほど心地いい。先端を沈めた瞬間、侵入していく最中、根本まで挿し終えたあとなど、何度も射精を堪えなければならない。
腰を使い始めればこちらに合わせるようにして締まりうねるその貪欲な動きも、普段の涼しげな奥村殿からは想像もできない熱さで、俺はいつも思わず唇を歪めてしまうのだ。
「あ」
ふと、急に思い立った。政宗の好む髪も、兼続の好む手も目に見えてはいるが、俺の好きな奥村殿のなかはどんな様子なのかまだ見たことがなかった。
俺が急いで陰茎を抜けば、それだけで奥村殿は喉をひきつらせ体を反らせた。
「どうかしたのか」
「どうした、幸村」
兼続と政宗の問いかけに俺は返事をしないまま、奥村殿の脚を広げた。
力の入っていない脚はそれでも閉じようと幽かに抗ってきたが、内腿をぱしんと叩けばすぐに大人しくなった。
布団の横にあった行灯を更に近くへ引き寄せ、位置を調整する。
兼続も政宗も不思議そうな顔をしていたが、前田殿だけは唇を柔らかに緩めて俺を見ている。
「……っや、あぁ、ぁ」
幽かに開いたまま、ねだるようにひくひくと震えているそこへ右手と左手の指を一本ずつ入れ、ぐいと広げると、奥村殿はようやく俺を見た。
涙の勢いが増し、顔の赤みもより強くなる。
そしてその染まった頬や耳や首筋よりも、奥村殿のなかは紅かった。
卑猥に熟れた肉は、政宗や兼続や俺が出した精液と香油の混ざったものにまみれ、ぬるぬると蕩けている。必死に閉じようと力を込めているからなのか、内側の肉の壁が誘うようにうねっている。
「すげえ…奥村殿、肌は少し白いのに、なかはこんなに赤いんだな…」
今はきちんと俺の言葉も耳に届いているようで、力なく首を振っていた。言うな、見るなと舌足らずな声が返ってくるのが堪らなく嬉しかった。
俺はうねる肉の奥から、淫らな泉のように湧き出てくる精液や香油をすくってはなかへ戻してやりながら、奥村殿の膝の裏へ片手をあててぐいと押し、政宗や兼続も見える位置へ奥村殿の腰を持ち上げた。俺が好きなところのきれいさを、ふたりにも見てもらいたくなったのだ。
「ほら、見ろ、すげえぞ」
政宗と兼続が身を乗り出して覗き込むと、無駄なことなのに奥村殿はまた抗って脚を閉じようとした。それを他でもない前田殿が黙って足首を掴み、動きを封じてくれる。
その膝の裏に溜まっていた汗が腿から尻へ、ちらちらと輝きながら伝っていくのを目に留めながら、前田殿のお陰で両手が自由になった俺は改めて奥村殿の入り口を指で左右に開いた。
無理な体勢を強いられているせいで腹により力が入るらしく、奥村殿のなかからは先程のようにすくって戻すのが間に合わないほどの勢いで精液と香油が溢れ出してくる。
行灯の光にあたる精液は暖かに煌めきながら伝い落ち、奥村殿の熱い入り口や尻の割れ目、そして美術品のように見事な尾骨から背骨にかけての隆起を淫靡に飾り立てていた。
広げている指を動かすと、奥村殿の肉は赤子の口のような音をたてて蠢き、目を焼くほどの卑猥な眩さで行灯の明かりを照り返す。
ふたりはしばらく奥村殿の肉に魅入り、そのあとで溜め息を吐くように言った。
「なるほど、確かにこれは…」
「うむ……香油の香りも立ち上って、さながら肉の花であるな」
奥村殿の肉の花から、俺たちの出した精液が蜜のように止めどなく溢れる。
これにはこの世のどんな花も勝てないんじゃないかと思えるほど、きれいな眺めだった。
膝が胸につくかというほどの角度で足を広げさせられ、花の造りを知ろうとする子供のような様子で俺たちになかを覗き込まれている奥村殿は、唇をぎゅっと噛み締め、目を強く閉じて震えながら涙を流している。
しゃくりあげる瞬間、引き締まった腹や腿にぶるりと震えが走り、そして俺の指を拒むように奥村殿の入り口も幽かに震える。
前田殿は、俺たちがなかを観賞するのを手伝ってくれながらも、その目は奥村殿の涙を見つめていた。
俺たちが抱くあいだ、前田殿は必ず奥村殿の右手をとるが、陰茎を握らせることもせず、ただ柔らかに指を絡めたり、手首を撫でたりして優しく愛でるだけだった。
それで俺たちの気が済んだ後、その右手は柔らかに繋いだまま、見ているこちらのほうが心配になるほどの容赦のなさで奥村殿を抱くのだ。しかし奥村殿も、どれほど疲れきっていても前田殿を受け入れ、前田殿が達した瞬間にようやくその腕のなかで意識を手放して休む。
そうまでして応えてくれる奥村殿が愛しくて堪らないのだと、意識のないその体を清めながら前田殿はいつも言う。前田殿には、政宗も兼続も、もちろん俺も敵わない。
けれど、だからこそ、前田殿の望むかたちを望む奥村殿に応えてやるのが、奥村殿を愛している俺たちに出来る最大の愛情の示しかただった。